食行動
前川文彦・矢田俊彦
(自治医科大学・生理学)
はじめに:
日本でも西洋的な食事の摂取と関連して肥満症やそれに伴う糖尿病、動脈硬化、高血圧などの生活習慣病の発症率が年々増加している。また、疫学的研究によると神経性食欲不振症や過食症患者の発症率も世界的に増加している。摂食やエネルギー代謝の研究は近年、このような時代の要請に加え、分子生物学の進歩と相まって飛躍的に理解が深まりつつある。さて、摂食、代謝やそれらの異常が原因となって引き起こされる病態には明確な性差が存在するが、その性差の仕組みを探る研究は必ずしも大きく進展していない。ヒトと同様に、基礎研究の対象となる実験動物でも雄性動物の方が雌性動物よりも摂食量は多いが、体重や体組成に大きな性差があること、雌性動物では発情周期や妊娠、授乳� �どライフサイクルに伴って複雑な摂食、代謝の変化を示すこと(Tarttelin and Gorski, 1971)などの理由から、雌雄の比較を厳密に行うことは難しく、摂食と代謝の性差を調べる障害となっている。現在の摂食行動に関する脳内制御機構の模式図の多くは雄性動物をモデルとして描かれている。しかし、その模式図が必ずしも雌性動物にも当てはまるとは限らない。将来の性差医療に資するためにも、食行動の性差研究の発展は必要であると考えられる。この章では食行動の性差に関する現在までの知見を紹介し、今後の検討課題について考察する。
末梢組織と摂食関連ホルモンの性差:
ヒトを含めた多くの動物で体重、体組成に関して顕著な性差がある。多くの種では雄は雌より体重が重い。ヒトでは同身長・同体重の成人を比較すると男性に比べて女性は筋肉量が少なく、脂肪量が多いが、そのことは実験動物であるラットやマウスにおいても当てはまる。
白色脂肪組織に注目すると、男性は全脂肪分のうち内臓脂肪の比率が高いのに対して、女性では皮下脂肪の比率が高い(Wajchenberg, 2000)。男性から女性への性転換者がエストロゲン投与を受けると皮下脂肪が増加し、女性から男性への性転換者がテストステロン投与を受けると内臓脂肪が増加するという報告があり(Elbers, 1999)、この脂肪局在の違いは性ステロイドの活性化作用によるものと考えられる。脂肪細胞から放出され摂食抑制、代謝亢進に働くレプチンは白色脂肪の部位によって分泌量が異なることが解っている。皮下脂肪は内臓脂肪よりもレプチンの分泌量が多く(Wajchenberg, 2000)、おそらく脂肪の量と局在の違いを主な原因として、女性は男性よりも血中レプチン値が高いこと(Nindl et al., 2002, Roemmich et al. 1998)が報告されている(表1)。この性差は実験動物であるラットやマウスにおいても同様であり、血中レプチン値は雌の方が高い。この性差は主にステロイドの活性化作用によって形成されると考えられている(Watanobe and Suda, 1999)。同様に、小型脂肪細胞から分泌され、中枢神経系を介して体重減少に働くアディポネクチン(Qi et al., 2004)も血中濃度は女性や雌性動物の方が高い(Nishizawa et al., 2002, Combs et al., 2003, Bottner et al., 2004)。アディポネクチンの血中濃度は閉経前後で変化しないことが判っており、閉経後に血中レベルが減少するレプチンとは異なった制御を受けていることが報告されている(Nishizawa et al., 2002)。雄マウスでは脂肪細胞によるアディポネクチン分泌はアンドロゲンによって制御されており、テストステロンやジヒドロテストステロンによりmRNA発現が低下することが報告されている(Nishizawa et al., 2002)。アディポネクチンやレプチンとは逆に、インスリン抵抗性誘導に関わるレジスチンは男性で血中レベルが高いことが報告されている(Nogueiras et al., 2003)。脂肪からの摂食関連ホルモンの中では、レプチンは脳室内に投与した場合、雄と比較して雌における摂食抑制効果が強いことが報告されている(Clegg et al., 2003)。脳内のレプチン受容体に関しても雌の方がレプチン受容体の発現が多いという報告もあり(Smith and Waddell, 2003)、レプチン分泌とその感受性の違いが雌雄の長期的な摂食量の違いに影響を与えているという仮説が提唱されている。
脂肪組織の中でも、褐色脂肪組織は交感神経系によって活性化され非ふるえ熱産生を行う組織である。エネルギー消費には性差があり、かなり早い時期から男性の方が女性よりも消費量が多い(Kirkby et al., 2004, Paul et al. 2004)。褐色脂肪細胞にはステロイド受容体があり(Pedersen et al., 2001a)、エストロゲンによって脱共役蛋白質の発現が制御されている(Pedersen et al., 2001b, Rodriguez and Palou, 2004)。また、褐色脂肪組織に分布するアドレナリン受容体の発現にも性差がある(Rodriguez, 2001)。以上のような原因からエネルギー消費の性差が発現している可能性がある。
膵島b細胞から摂食直後に放出されるインスリンは中枢神経系に働き摂食を抑制することが報告されている。環境条件にもよるが実験動物では、グルコース刺激によって雄性動物の方がより多くインスリンを分泌するという報告がなされている(Ruhe et al., 1992, Sugden and Holness, 2002)。テストステロンはインスリンmRNA発現を上昇させる働きを持つことから、この性差は精巣からのテストステロンに起因して形成されている可能性がある(Morimoto et al., 2001)。インスリンを脳室内に投与すると雄ラットにおいてより強く摂食が抑制されることから、脳においては雄の方がインスリンに対する感受性が高いことが報告されている(Clegg et al., 2003)。インスリンはその分泌形態から短期的な摂食抑制に重要な働きを持つことが想像され、感受性の違いが食餌回数など摂食パターンの雌雄差に影響を与えている可能性がある。日本人では2型糖尿病の有病率が男性の方が高いことも付記しておく(原・門脇, 2004)。
胃から放出されるホルモンで、摂食や成長ホルモン分泌を促進させる働きを持つグレリンの血中濃度は女性の方が多いという報告(Liu et al., 2002, Greenman et al., 2004)と性差がないという報告(Purnell et al., 2003)がある。その中枢神経系の感受性の性差に関する報告はいまだなされていない。消化管から放出される摂食抑制ホルモンとして古くから知られているコレシストキニン(CCK)に関しても、分泌や中枢神経系での感受性の性差に関して様々な報告があり(Canova and Geary, 1991, Kissileff et al., 2003, Strohmayer 1996, Schneeman et al. 2003, Nolan et al. 2003)、いまだ結論は出ていない。
性ステロイドホルモンの摂食行動への影響:
エストロゲン:
女性は閉経後、腹部への脂肪の蓄積を伴う体重の増加が起こる場合がある(Carr, 2003)。成体雌ラットでも、卵巣を除去すると摂食量が上昇し体重が正常雌ラットより20-25%程度増加する。体重の増加の主な原因は脂肪蓄積による(Leshner and Collier,1973)。卵巣除去したラットにエストロゲンを持続投与すると摂食量が減少し、脂肪量減少を伴った体重減少がおこることから(Bell and Zucker, 1971, Dubuc, 1974)、卵巣からの摂食抑制因子はエストロゲンであると考えられている。
エストロゲンは末梢組織において摂食関連ホルモンの分泌を変化させることを介した間接的な作用と中枢神経系への直接的な作用の2つの作用機序を介して摂食を制御していると考えられる(図1)。末梢作用に関して詳しく調べられているのは脂肪細胞への影響である。エストロゲンは脂肪細胞に働き、脂肪量の調節を行っている。脂肪細胞にはa,b型両方のエストロゲン受容体があるが、脂肪の場所や性差によってその発現量は異なる(Pedersen et al. 2001a, Dieudonne et al. 2004)。a型エストロゲン受容体遺伝子欠損マウスでは雌雄共に顕著な体重増加、脂肪蓄積が見られるのに対して、b型エストロゲン受容体遺伝子欠損マウスでは野生型マウスと違いが見られないことから(Heine et al. 2000, Ohlsson et al., 2000)、特にa型エストロゲン受容体がエストロゲンによる脂肪量減少に関与していることが判っている。脂肪量の調節と共にエストロゲンはレプチン分泌の調節も行っている。女性のレプチン値は閉経後減少することが報告されており(Douchi et al. 2002, Nishizawa et al. 2002)、血中のエストロゲンがレプチン値の上昇に関与していると考えられている。エストロゲンはin vitroで脂肪細胞からのレプチン分泌を上昇させるという報告があり(Shimizu et al. 1997, Kristensen et al. 1999, Tanaka et al. 2001)、レプチン産生を増加させることで摂食量を減少させている可能性がある。
双極性うつ病&じんましん
エストロゲンの中枢作用に関しては、主に、1)エストロゲンが作用する受容体と作用する神経核、2)末梢ホルモンに対する感受性の調節、3)摂食関連神経伝達物質の変動の3点について報告がなされている。a型エストロゲン受容体欠損動物は摂食亢進が起こる(Geary et al., 2001)が、b型欠損動物ではそのような報告はなされていないので、エストロゲンの摂食抑制作用は主にa型受容体を介しているという説が有力である。一方で、脳室内にエストロゲンを直接投与して摂食抑制を引き起こした場合、a型受容体に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与しても摂食低下は防げないが、b型受容体に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与すると摂食低下が阻害されたという報告があり(Liang et al., 2002)、どちらの受容体がエストロゲンの中枢作用に必要なのか結論が出ている訳ではない。エストロゲンが作用する神経核に関しては、卵巣除去ラットの視床下部内の腹内側核-弓状核領域(Wade and Zucker, 1970)、室傍核(Butera and Beikirch 1989, Butera et al. 1990)、視索前野(Dagnault and Richard, 1997)のそれぞれにエストロゲンを投与した場合、摂食が抑制されたという報告があることから、エストロゲンが直接作用する部位としてこの3つの領域が重要であると推察される。これらの領域にはいずれもレプチン受容体が発現している(Mercer et al. 1996, Schwartz et al., 1996)。また、エストロゲン受容体を持った細胞はほとんどレプチン受容体陽性である (Diano et al., 1998)。卵巣を除去した成熟雌ラットでは脳室内に投与したレプチンに対する反応性が低下する(Ainslie et al. 2001)。この原因として、卵巣除去により弓状核のレプチン受容体が減少することが報告されている(Ainslie et al. 2001)。一方、エストロゲンを皮下に持続投与し摂食量が低下した雌ラットでは卵巣除去ラットと比較して視床下部のレプチン受容体mRNA発現は上昇しており(Meli et al., 2004)、レプチンへの反応性が回復している。これらの報告からエストロゲンはこれらの領域のレプチン感受性に影響を与えて摂食を制御していると考えられる。エストロゲンはCCKに対する感受性にも影響を与えている。エストロゲン投与によってCCKによる摂食抑制効果は増強される (Geary, 2001)。また、a型エストロゲン受容体遺伝子欠損マウスではCCKによる摂食抑制効果が効きにくい(Geary et al., 2001)。これらの報告はレプチンのように視床下部に直接伝達される摂食抑制シグナルに加えて、CCKのように主に迷走神経を介して視床下部に伝達される摂食抑制シグナルの伝達系路もエストロゲンによって調節されていることを示している。
脳内での神経伝達物質の変動に関してもいくつかの報告がある。雌ラットにおいては、卵巣を除去すると弓状核のNPY mRNA発現が増加し(Ainslie et al. 2001)、卵巣除去ラットにエストロゲンを持続投与すると減少するという報告(Shimizu et al., 1996)があることから、エストロゲンは弓状核のNPYニューロンを抑制することで摂食に抑制的に働いている可能性がある。弓状核NPYからの投射先として有力な候補は室傍核のコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)ニューロンである。CRHは摂食抑制に働くことが広く受け入れられているが(Richard et al., 2002)、CRH受容体阻害剤をエストロゲンと共に投与するとエストロゲンの摂食抑制効果が無くなることから、エストロゲンは脳内のCRH放出を介して摂食を抑制している可能性が示唆されている(Dagnault et al., 1993)。室傍核には弓状核からのNPY投射があり(Bouret and Simerly,2004)、また、エストロゲンの持続的な投与によってNPYの室傍核での放出が低下するという報告もある(Bonavera et al. 1994)。エストロゲンは雌ラットでは弓状核と室傍核の機能を修飾することで摂食を抑制していると考えられる。また、弓状核からの入力を受ける視床下部外側野のメラニン凝集ホルモン(MCH)ニューロン(Elias et al. 1998)のMCH mRNAは過食・肥満マウスで発現が亢進し、やせマウスで発現が低下していることから(Qu et al. 1996, Yamada et al., 2001, Maekawa et al. 2004)、摂食開始・停止の判断を決定する重要な因子と考えられているが、エストロゲン投与により外側核のMCH mRNA発現が低下するという報告があり(Murray et al. 2000)、エストロゲンがMCH合成を抑制することによって摂食を低下させている可能性がある。その作用は直接的なものか間接的なものかは判っておらず、エストロゲンとMCHニューロンとの関係は今後詳しく検討する必要があると思われる。
エストロゲンは雄性動物においても摂食抑制効果を持つ。雄性動物では雌とは異なり、エストロゲン投与により弓状核のNPY mRNA発現が上昇し、摂食抑制物質であるa-メラノサイト刺激ホルモン(a-MSH)の前駆体であるプロオピオメラノコルチン (POMC) mRNA発現が低下するという複数の報告があるが(Tritos et al. 2004, Mystkowski et al, 2000)、これらのmRNA発現の変動では摂食低下の説明は出来ない。一方エストロゲンの持続的な投与により雄でも視床下部外側核のMCH mRNAが低下するとの報告があり(Mystkowski et al, 2000)、このmRNA発現の変化はエストロゲン投与による摂食抑制がおこる原因として整合性がある。しかしながら、MCH遺伝子欠損マウスでもエストロゲンによる摂食の低下が見られるという報告、エストロゲンによって逆にMCH mRNAが上昇するという報告があり(Tritos NA et al., 2004)、MCHニューロンの働きだけでは雄におけるエストロゲンによる摂食の低下を説明することはできない。このようにエストロゲンが摂食抑制する脳内回路についての研究は発展途上であり、今後のさらなる検討が必要である。
最近、脳も含めた様々な組織においてエストロゲンがPI3キナーゼやAktなどインスリン、レプチン受容体の下流に存在するシグナル伝達系路を活性化することが報告された。このようないわば摂食抑制シグナル伝達系路の活性化が上記の神経経路でエストロゲンによって引き起こされるかどうかに関して、今後詳しく検討されていくものと予想される。
アンドロゲン:
成熟雄ラットでは精巣を除去すると摂食量が減少し、体重増加が抑制されることが報告されている(Mitchel and Keesey, 1974)。精巣除去によって食餌回数が減少し、一度の食餌量が上昇するという摂食パターンの違いも観察されている(Chai et al. 1999)。精巣除去の効果はテストステロンを低容量投与することで抑えられる(Gentry and Wade, 1976)。これらの報告から、テストステロンは摂食行動に促進的に働いていると考えられている。
脳内では精巣除去により弓状核のNPY mRNA発現が減少すること(Sahu et al. 1992)、摂食抑制物質であるコカイン・アンフェタミン調節転写産物(CART) mRNA発現が上昇すること、またこれらのmRNAの変動はテストステロン投与により回復することが報告されており(Sahu et al. 1992, Sohn et al. 2002)、NPY放出を促進するとの報告もあることから(Sahu et al. 1989)、テストステロンは弓状核に働いて摂食亢進に働いている可能性がある。しかしながら、視床下部腹内側核-弓状核領域にテストステロン・プロピオネートを投与すると皮下に植え込んだ場合とは逆に摂食減少が起こること、またジヒドロテストステロンを視床下部に投与しても摂食量は変わらないこと(Nunez et al. 1980)が報告されており、摂食制御という点ではテストステロンは視床下部に直接影響を及ぼしていない可能性もある。加えて、アロマターゼ遺伝子欠損マウスでは血中テストステロン値が高く、エストロゲン値が低いにも関わらず摂食量は低下傾向にあること(Jones et al.,2000)、アンドロゲン受容体欠損動物では脂肪量が増し体重は増加するが摂食量は変化しないこと(Sato et al.,2003)も報告されている。総合的に考えると、成体雄で生理的に分泌されるテストステロンはエストロゲンほど強くは摂食に関与していないであろうと推測することができる。
雌特有の摂食行動:
慢性疲労症候群は、障害として分類されたとき
雌性動物は摂食量が一定している雄とは異なり、摂食量が発情周期に伴い大きく変化する。雌ラットでは発情期に摂食量と飲水量の低下、行動量の上昇を伴う体重の減少が見られる(Tarttelin and Gorski, 1971) 。また、このような変化はアカゲサルについても当てはまる(Czaja JA,1975)。ヒトでもプロゲステロンの分泌が盛んな黄体期に摂食量が上昇し、特に炭水化物摂取が増えることが報告されている(Dalvit-McPhillips, 1983, Wurtman and Wurtman, 1989)。性周期は摂食パターンにも影響を与え、ラットでは発情期には食餌回数の増加と一回分の食餌量の減少が観察される(Laviano et al.1996, Eckel et al.2000)。雌性動物では妊娠によって体重と脂肪蓄積の増加が起こる。ラットでは妊娠や偽妊娠により摂食量が増加する(Tarttelin and Gorski, 1971)。これはエネルギー要求量の上昇と血中プロゲステロン値上昇の2つの効果が原因であろうと推察されている。また、妊娠中期には血中レプチン値は上昇しているため(Seeber et al.,2002)、レプチンを感知して摂食減少がおこらないように脳においてレプチン抵抗性が起こっているものと考えられる。妊娠中の視床下部のレプチン受容体発現変動に関しては報告が一致していないが(Garcia et al. 2000, Seeber et al. 2002, Rocha et al., 2003)、レプチン受容体下流のSTAT3に注目すると、視床下部腹内側核でのSTAT3蛋白量の低下、弓状核でのリン酸化による活性化型STAT3の低下が起こっており(Ladyman and Grattan, 2004)、レプチン下流の細胞内シグナリングが抑制されることでレプチン抵抗性が形成され、その結果アグーチ関連蛋白(AgRP) mRNA発現の上昇(Rocha et al, 2003)など、摂食亢進系が働くようになるという仮説が立てられている。
分娩後の授乳はエネルギー要求量を上昇させ、摂食量を上昇させる。この時期の摂食量増加の主な原因は血中レプチン値の低下と搾乳刺激の2つからなると考えられている(Smith and Grove, 2002)。授乳期の脳内の神経伝達物質の変化に関しては比較的詳しく調べられており、弓状核において摂食促進に働くNPY, AgRP mRNA発現は増加し、摂食抑制に働くPOMC mRNA発現が減少することが報告されている(Smith and Grove, 2002)。また弓状核の下流に存在する室傍核のCRH mRNA発現が減少し(Windle et al. 1997)、外側核の摂食促進ペプチド、オレキシンmRNA発現が上昇することが報告されている(Sun et al.,2003)。これらの発現パターンは過食の病態を呈するレプチン欠損マウスでみられるパターンとよく似ている(前川・矢田, 2004)。授乳中は弓状核のNPY, AgRP mRNA発現や室傍核でのNPY放出が亢進しているが、これらはすべてレプチン投与によって抑制されることが報告されており(Crowley et al, 2004)、弓状核の神経伝達物質の変化はレプチン低下による影響が大きいものと考えられる。また、血中レプチン値低下に加えて、授乳期にはCCKによる摂食抑制効果も低下していることが報告されている(McLaughlin et al., 1983)。脳内ではCCKによる摂食抑制に関与する神経回路として視床下部背内側核のNPY ニューロンや延髄弧束核のプロラクチン放出ホルモン(PrRP)ニューロンが知られているが、授乳中は背内側核NPY mRNAは上昇し(Chen et al., 2004)、PrRP mRNAは減少すること(Lawrence et al., 2000, Morales et al., 2003)が報告されている。
摂食の好みの性差:
一般に、雄は雌に比べて蛋白質を多く含んだ食餌を好むことが報告されている(Jean et al.,2002)。精巣除去した雄ラットは食餌中の蛋白質量は増加しないが、卵巣除去した雌ラットでは蛋白質摂取の比率が大きく増加する(Leshner and Collier,1973)。また、雌ラットでも妊娠中には蛋白質と脂肪の摂取が上昇し、炭水化物の摂取が減少する(Leshner et al. 1972)。これらの報告は成体での性ステロイドの活性化作用が食餌成分の選択に影響を与えていることを示しているが、この選択に影響する神経回路に関して詳しいことは判っていない。食餌成分の選択と関連して、雌ラットは砂糖やサッカリンなどの甘み成分を雄よりも好むことが知られている。この性差は思春期の発動に伴って出現することが知られており(Wade and Zucker, 1969)、卵巣除去、妊娠、偽妊娠によって性差が無くなることが報告されている。またこのサッカリン好きの性向は周生期のアンドロゲン処理によって無くなるという報告(Wade,1972)や、子宮内での位置の違いによるアンドロゲン暴露の程度の違いがサッカリン嗜好を決定するという報告(Bushong and Mann, 1994)もある。総合して考えると、性ステロイドによる組織化作用、活性化作用、両方の効果によってこの性差が形成されると考えられる。この性差を決定する脳内回路に関しては、in vivoの単一記録電極による研究から橋傍腕核で甘み刺激に反応するニューロンの発火の度合いが、雌が雄よりも強いことが報告されている(Di Lorenzo and Monroe, 1989, 1990)。
摂食行動の性差と性分化:
はじめに述べたように、摂食量に関しては、性差があり雄の方が雌よりも摂食量が多い。
この性差を形成する神経回路に注目して研究したという報告は少ない。弓状核のNPY mRNA発現は雄の方が雌よりも強いことから、NPYによる摂食亢進に性差があるという報告がある(Urban JH et al. 1993)。また、CRHの持続的な投与では、雄では摂食量と脂肪減少を伴った体重の減少が起こるが、雌では起こらないという報告もある(Rivest et al., 1989)。これらの研究は弓状核から室傍核を経由して、他の脳領域に接続される神経回路が摂食の性差に関わっている可能性を示唆している。また、これらの視床下部領域に影響する脳の領域として、以前から摂食に抑制的に働く中脳縫線核セロトニンニューロンの摂食行動の性差への関与が疑われているが(Oluyomi et al., 1994)、このことを詳しく研究した決定的な報告は発表されていない。ここまでに見てきたように、成体雌ではエストロゲンが摂食に抑制的に、成体雄ではアンドロゲンが摂食に促進的に働くことが摂食量の性差を形成する大きな要因の一つであると考えられる。一方で、周生期の性ステロイドの組織化作用については古典的な研究しか存在しない。周生期のテストステロン・プロピオネート投与によって雄性化された雌ラットは、正常雌と比較して体重増加が見られることが報告されている(Bell and Zucker, 1971)。またこの雄性化された雌はエストロゲン投与による体重減少作用に感受性が低く、テストステロンによる体重増加効果に対して感受性が高い。生後1日目で精巣除去された雄ラットでは反対に、卵巣ホルモンによる体重減少の感受性が高く、テストステロンに対する体重増加の反応が弱い。このように体重が明確に周生期の性ステロイドによる組織化作用を受けるのに対して、摂食量に関しては周生期の雄に対する精巣除去や雌に対するテストステロンの明確な効果は見られない(Bell and Zucker, 1971)。この分野の先駆者の一人であるWade(1972)は、体重の違いはステロイドによる摂食行動への活性化作用と代謝機構への効果の2点を主な原因としており、組織化作用による影響は少ないのではないかと考察している。しかしながら、周生期のステロイドの組織化作用が成体の摂食に影響を及ぼすとする報告もある(Nance and Gorski, 1975)。少なくとも、摂食行動の中でも、サッカリンに対する嗜好性(Wade ,1972)や摂食パターン(Madrid et al., 1993)、エストロゲンに対する摂食抑制の反応性(Gentry and Wade,1976)に関してはステロイドの活性化作用だけでは説明がつかない部分もある。食行動の性分化研究に関しては今後さらなる発展の余地があると思われる。
終わりに:
ヒトにおける摂食に関する病態で、罹患率に最も顕著に性差があるのは神経性食欲不振症であり、患者の多くは女性である(切池,2000)。この性差を実験動物を使ったモデルで再現した報告がある。痛覚刺激を他のラットに与え、その状況を見せることで情動ストレスをかけたとき、雌ラットの方が雄ラットに比べてより摂食量が減少することが報告されている(Kuriyama and Shibasaki, 2004)。この例のように、通常状態の摂食量の性差だけではなく、特定の環境条件や病態における食行動にも性差が存在する。特に摂食障害には性分化が大きく関わっている可能性があるが、実験的な研究はほとんどなされていない。ヒトの病態における性差の研究に適したモデルの開発など課題はあるが、摂食における性差・性分化の基礎的な研究と併せて今後の研究の発展が期待される。
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