排尿の回数が多くて困ることを頻尿といいます。特に、夜間就寝中の頻尿を夜間頻尿といいます。高齢者に一番困ることのアンケート調査をすると、先進国ではどの国でも夜間頻尿が一番にあげられています。夜間頻尿では生存率が低下することも知られています。頻尿や夜間頻尿の原因は様々ですので、何が原因となっているのかを探り、生活習慣の改善や薬での治療を行います。泌尿器疾患の他に、水分の取り過ぎ、高血圧や睡眠時無呼吸などの睡眠障害でも夜間頻尿となります。
最も注意すべきは、水の飲み過ぎです。以前は水分をたくさん取って血液をサラサラにして、脳梗塞や心筋梗塞を予防しましょうといわれたことがありましたが、根拠のない話であることが確かめられて、今では水分を多く取るようにはいわなくなりました。重労働している方や動けない方を除いて、通常の生活で脱水になることはほとんどなく、水分を多く飲んで血液がサラサラになることもなく、病気の予防になることもありません。中国医学(漢方)でも、水の取り過ぎは水毒といわれ、注意すべきこととされています。水の取り過ぎは食べ過ぎと同じで良くないことであり、高血圧の原因になったり、心臓や胃の働きを弱める恐れがあります。高齢者では夜間1回以上、排尿に起きるのなら脱水はありません。
尿失禁(尿も� �)
尿失禁(尿もれ)には幾つかのタイプがあり、代表的なのはくしゃみや咳などおなかに力が入った時の尿もれ(腹圧性尿失禁)、急に尿意を感じてトイレまで間に合わずにもらしてしまう尿もれ(切迫性尿失禁)と、夜間就寝中のおねしょ(夜尿症)です。尿失禁(尿もれ)の治療には生活習慣の改善、運動療法、薬での治療や手術による治療があります。尿失禁のタイプにより治療法が異なりますので、タイプに合わせて治療法を選択します。当院では最新の安全なTOT式尿失禁防止術を行っています。手術時間は20-30分で、健康保険が適用され、通常2泊3日の入院です。
急性膀胱炎
尿の出口(尿道口)からは細菌が上がってきますが、その細菌が膀胱に達して炎症を起こした状態が膀胱炎(細菌性膀胱炎)です。疲れている時、尿の長時間のがまんや性行為後にしばらく排尿しなかったりするとなることがあります。細菌性膀胱炎となるのは多くは女性で、排尿痛や頻尿、血尿などの症状が出ます。治療は抗生物質の内服です。頻回に膀胱炎を繰り返すようなら、その原因を調べて対処すべきです。
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慢性膀胱炎・尿道症候群
慢性膀胱炎というのは細菌性膀胱炎が慢性化した場合と、細菌感染はないが膀胱炎症状が慢性的に続く場合の両方の意味があります。慢性細菌性膀胱炎の場合には神経因性膀胱があって残尿が生じている場合や、尿道が狭くなっている場合(尿道狭窄症)などがあります。高齢者では膀胱炎症状がほとんどないこともあります。細菌性でない場合には膀胱の出口寄りから尿道にかけての炎症のことが多く、原因ははっきりとは分かっていません。頻尿や残尿感、下腹部不快感などのはっきりしない症状のことが多く、正確には尿道症候群といわれる疾患で、多少なりとも尿道の狭窄を伴っていることから、治療は薬での治療と尿道拡張療法になります。尿道拡張は簡単な治療で、細いものから適切な太さのものまで順に尿道に挿入する� ��ので、15分ほどで終了し、2-4週置きに3回ほど行います。
間質性膀胱炎
普通の膀胱炎は細菌性膀胱炎で膀胱上皮(粘膜)に炎症がありますが、間質性膀胱炎は膀胱の間質(膀胱の上皮と筋肉の間)の慢性の炎症です。原因は分かっていません。普通の膀胱炎は排尿する時の痛みがありますが、間質性膀胱炎では尿が膀胱にたまってきたときの膀胱の痛みが特徴で、排尿で痛みは軽減します。間質性膀胱炎は日本では欧米ほど多くはありませんが、最近は日本の泌尿器科医の間にも間質性膀胱炎の認識が進み、中高年の女性を中心に間質性膀胱炎と診断される数が増えています。薬での治療と、膀胱に水を入れて膀胱をふくらます膀胱水圧拡張療法で症状は改善します。
前立腺肥大症
高齢男性に多く見られる病気です。膀胱のすぐ下にあって尿道を囲んでいる前立腺が肥大した結果、尿道や膀胱が圧迫されて排尿障害を引き起こします。以前は手術療法が行われていましたが、現在では優れた薬が開発され使用されており、手術が必要になることはほとんどなくなりました。前立腺肥大症では徐々に尿の出が悪くなるのですが、夜間頻尿をきっかけに受診される方が多いようです。
慢性前立腺炎
若者から高齢までの男性にみられます。残尿感や尿の出が悪くなったり、頻尿になったりと前立腺肥大症と同じような症状です。細菌が原因の場合と、細菌とは無関係になったりします。原因不明ですが、タクシーやトラックのドライバーや、事務職など座りっぱなしの職業に多く見られることから、骨盤内のうっ血がその発症に関係していると考えられています。生活習慣の改善と薬で治療します。
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前立腺癌
50歳以降の男性にみられ、日本では確実に増えています。前立腺肥大症に合併して前立腺癌がある場合が多いので、前立腺癌の症状は前立腺の肥大がなければほぼ無症状で、肥大があれば前立腺肥大症の症状です。そのため、症状から前立腺癌を診断したり、疑ったりはできません。採血で前立腺特異抗原(PSAまたはPA)を調べることが発見のきっかけになります。PSAは前立腺癌で高くなりますが、前立腺肥大症や慢性前立腺炎でも高くなります。PSAが高いからといって必ずしも癌ではないのです。PSAが高い場合には、必要に応じて前立腺に針を刺して前立腺の一部を取って調べる前立腺生検を行い、確定診断します。前立腺癌の治療には、薬での治療、放射線治療と手術治療があります。前立腺癌の発見時に転移がなければ、適切な治 療でその後の生存率は悪くありません。
神経因性膀胱
脳梗塞・脳出血といった脳血管障害や脊髄障害では排尿の調節がうまくいかず、排尿障害が発生します。また、糖尿病では膀胱の神経の働きが悪くなって排尿障害が生じます。子宮摘出手術や直腸の手術などでも膀胱の神経が障害されて排尿障害が生じる場合があります。このような神経系の障害で発生した排尿障害を神経因性膀胱といいます。神経因性膀胱の排尿障害は通常の排尿障害より治りにくいのですが、薬の組み合わせや、自己導尿、生活指導など根気強く治療することで、改善していきます。
過活動膀胱
原因が何であれ、急に尿意が出現して尿を漏らしそうになるという尿意切迫感のある状態で、通常は頻尿や夜間頻尿を伴うものです。ただし、細菌性膀胱炎や膀胱癌が原因の尿意切迫感は過活動膀胱とはいいません。この診断名は原因が分からなくても尿意切迫感に効く抗コリン薬を症状だけからでも処方できるようにと新たに作られた診断名です。男性では前立腺肥大症や慢性前立腺炎、神経因性膀胱などが原因となり、女性では尿道症候群、無菌性慢性膀胱炎、間質性膀胱炎や神経因性膀胱が原因となりますが、実は原因不明も多いので過活動膀胱という診断名は抗コリン薬を出したい場合には便利です。
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性器脱・膀胱瘤
中高年の女性で、骨盤内の組織が弱くて、膣から膀胱、子宮や直腸のいずれかまたは複数の臓器が瘤(こぶ)のように出てくる疾患です。膀胱だけが出てくるのを膀胱瘤、子宮の出てくるのを子宮脱といいます。昔はその見た目から"なすび"ともいわれていたようです。子宮を手術で摘出した方では小腸をいれた膣壁の瘤として出てくることもあります。見た目だけでは何が出てきているのか分からないことが多く、膀胱造影検査などが必要となります。薬では治りませんので、治療は膣内にリングペッサリーを挿入して出てこなくする方法や、膣壁を切開して膀胱や直腸との間にメッシュ状の布でハンモック状に支える手術(最新のTVM手術)や、膣閉鎖術があります。以前は膣円蓋前腹壁固定術という手術が行われていましたが、再� �率が高くて現在では行われていません。子宮摘出術、リングペッサリーを挿入して出てこなくする方法や、膣閉鎖術は婦人科の手術です。TVM手術は沖縄県内では沖縄協同病院泌尿器科で行っています。北上中央病院ではTVM手術が可能かの検査を行っています。TVM手術の適応と判断すれば、沖縄協同病院へ紹介しています。
腎結石・尿管結石・膀胱結石
泌尿器科の代表的疾患のひとつが尿路結石です。中高年の男女にみられますが、男性に多い疾患です。結石の原因は複数ありますが、結石の成分をみるとその原因が分かることがあります。腎臓に結石があると腎結石、腎臓にあった結石が落ちてきて尿管に留まるのが尿管結石、膀胱まで落ちてくると膀胱結石と名前が変わります。最も頻度の高い結石成分はシュウ酸カルシウムで、これは食べ過ぎの方にでき易く、お茶やホウレン草にもシュウ酸が多く含まれますから注意しましょう。高尿酸血症の方は尿酸結石ができ易く、ビールには尿酸のもととなるプリン体が多いので尿酸結石の形成を促進しますからビールの多飲には注意です。慢性の腎や膀胱の感染症ではリン酸を含む結石ができてきます。1cm以内の大きさであれば自然排� ��が期待できますが、それ以上の大きさでは体外から衝撃波を照射して結石を破砕する方法や、内視鏡的に結石を破砕する方法などを選択します。体外衝撃波破砕術の適応と考えられた場合には衝撃波破砕装置のある翔南病院泌尿器科へ紹介しています。
腎のう胞
加齢とともに腎臓にできてくることがある水たまり(嚢胞)です。検診の超音波検査でしばしば指摘され、それ自体は直径3cmくらいまでの大きさになるとそれ以上に大きくなることはまれで、問題となることは少ないのですが、血尿の原因となったり、まれに嚢胞の壁から癌が生じたりすることがあります。時に嚢胞が巨大化し、自然破裂して激痛で救急受診することがあるので、直径8-10cmを超えると針を刺して水を抜くことがあります。
嚢胞が腎臓にたくさんできる状態を嚢胞腎といいます。遺伝性の疾患であることが多く、腎機能障害が進行します。逆に腎機能障害で血液透析を数年行っていると腎臓に嚢胞がたくさんできてきて、癌の発生頻度が上昇しますので、定期的に検査が必要です。
血尿・尿潜血
尿に血が混じって赤かったり、検診で尿潜血を指摘されたら、原因を調べて治療を行います。血尿の原因は多く、腎炎、腎結石、腎のう胞、膀胱炎などが見つかりますが、多くは原因不明の問題とならない血尿で、貧血になることもありません。しかし、時に腎癌や膀胱癌も見つかることがありますので、血尿や尿潜血を指摘されたら検査を受けましょう。検査は超音波検査(エコー検査)と、尿中に癌細胞がないか調べる細胞診が基本で、必要に応じて腎炎の有無を調べる採血を行います。何年も前から毎回指摘されているから大丈夫と放置していると、癌が進行していることがまれにありますから、毎年尿潜血を指摘されていても、1年に1回は検査を受けましょう。
尿道炎・性感染症(STD)
尿道の出口から膿がでて排尿するときに痛む尿道炎では性行為感染症(クラミジア、淋病、性器ヘルペス、コンジローマなど)に感染していないか検査し、治療を行います。クラミジアでは症状のほとんどないこともあります。治療は内服薬で行います。
勃起不全(ED)
加齢や糖尿病では勃起が十分でないことがあります。そのような場合はバイアグラなどで治療します。保険外治療になります。
腎盂腎炎
腎臓の中に細菌感染が起こって高熱が出る疾患で、小児から高齢者までみられます。細菌は膀胱から尿管を通って上行し、腎臓に達して炎症を起こします。そのため、膀胱炎が先にある場合があります。背部痛のある場合もあり、高熱が出ますので治療は急を要します。抗生物質の点滴静注を行います。慢性化すると高熱が出ない場合がありますが、腎機能が低下して、両側の腎臓に起こると腎不全の原因になります。
精巣上体炎(副睾丸炎)
精巣上体は精巣(睾丸)に接して存在する精子の通り道の多少膨らんだ組織で、精巣上体炎はそこに細菌感染を起こして腫れて痛みます。急性と慢性があり、急性精巣上体炎は小児から若年成人にみられ、精巣上体は大きく腫れて痛みが強く、高熱がでます。慢性精巣上体炎は中高年にみられ、腫れは少なく、しこりがあり、発熱はありません。急性精巣上体炎は抗生物質の点滴静注と安静ですが、慢性精巣上体炎は長期的な抗生物質の内服治療が主で、改善が十分でない場合には精巣上体摘出術を行います。精巣上体は前立腺と精管でつながっているので、精巣上体炎のある時には前立腺炎のあることが多いようです。
腎細胞癌・膀胱癌
腎細胞癌(腎癌)も膀胱癌も初発症状は血尿のことが多いので、血尿があった場合にはこれらの腫瘍を念頭に検査を進めます。どちらも中高年の男女にみられますが、時に若年成人にも発生します。膀胱癌は男性に多くみられます。近年は超音波検査の普及で、検診でも見つかり、早期発見ができるようになってきました。治療は手術療法(摘出術)が基本になります。
精巣腫瘍
精巣(睾丸)にできる悪性腫瘍で癌とほぼ同じですが、発生学的組織学的に癌ではない悪性腫瘍が混在することがあるため、精巣腫瘍といわれます。20歳代30歳代の男性に発生します。早期に精巣摘出術を行うと予後良好ですが、恥ずかしさのために受診が遅れ、受診時には既にかなりの大きさになって転移している場合もあります。腫瘍の組織型によっては放射線治療や抗癌剤治療が有効な悪性腫瘍のひとつでもあります。
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