これまで複数回に分けて「皮膚のかゆみ 発疹がある場合」についてみてきました。
一方、表面上はとくに発疹などはみあたらず、しかしとにかく体のあちこち、全身がかゆくて非常に不快だという事態もおこりうるのです。その裏には、深刻な病気が隠れていることもあります。
以下、症状から見ていきましょう。
これまで複数回に分けて「皮膚のかゆみ 発疹がある場合」についてみてきました。
一方、表面上はとくに発疹などはみあたらず、しかしとにかく体のあちこち、全身がかゆくて非常に不快だという事態もおこりうるのです。その裏には、深刻な病気が隠れていることもあります。
以下、症状から見ていきましょう。
1.皮膚表面に異常はなく、他の症状もないのに、とにかく全身がかゆくなる。
⇒【 皮膚掻痒症 】
2.体じゅうがかゆくなり、次第に皮膚が黄色くなってくる(黄色くならない場合も多い)。黄色いかたまり(腫瑠)が皮膚にできることも。
⇒【 原発性胆汁性肝硬変 】
3.手足の先がむずがゆくなり、お腹や背中などあちこちかゆくなってくる。それにも増して、喉の渇き、倦怠感(だるさ)、多尿、神経痛、多食、体重減少などのほうが自覚されやすい。
⇒【 糖尿病 】
4.全身倦怠感や食欲不振から体重減少が見られ始め、皮膚の乾燥、吐き気、嘔吐、集中力低下、けいれんに加えて、全身の皮膚のかゆみが出てくる)。
⇒【 慢性腎不全 】
※1の皮膚掻痒症以外は、皮膚のかゆみ以外の症状が強く出てきたり、かゆみが出ないこともあります。全身の皮膚のかゆみ以外に全く症状が見られないような場合は、まず皮膚掻痒症を考えてみるとよいかもしれません。
それでは以下に、それぞれの解説と参考になるウェブサイトをご紹介していきます。
1.【 皮膚掻痒(そうよう)症 】
≪症状≫
明らかな皮膚の発疹はみられないのに、強いかゆみがある状態です。とくに太ももの前面や腰、腕にかゆみを強く感じる人が多いようです。それ以外には症状は見られません。お年寄りに多く見られます。温めると痒みは増し、掻いてしまうとますます悪化します。一般に、春から夏に症状は軽くなり、秋から冬にかけて悪化します。
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≪原因≫
一般に皮膚が乾燥しやすい人に多く見られます。皮膚が乾燥すると、本来持っているバリア機能が低下し、ちょっとした刺激に対して過剰に反応してしまいます。それが、かゆみとして感じられるのです(メカニズム的には、「皮膚のかゆみ 発疹がある場合-③症状が全身に現れるなら その2」で解説している皮脂欠乏性皮膚炎と同じです)。つまり、病気というよりも一種の体質と考えたほうがよいようですが、悪化原因はいくつかあります。まずは空気の乾燥、そして動物性の脂肪の多い食事、心理的ストレスによるものも増えています。さらに、ダニアレルギーの体質があると、ハウスダストの多い生活環境下で悪化しやすくなります。
≪対処法≫
ワセリンなどの保湿剤で肌の乾燥を防ぎます。入浴方法にもコツが必要。石鹸の使いすぎ、体のこすりすぎ、頻回の入浴は避けます。肌の乾燥につながる熱い風呂や、硫黄入り入浴剤の使用も避けます。冷暖房時も低湿度にならないよう注意し、冬は電気毛布は使わないようにします。肌着は締めつけない木綿製品や絹製のものがよいようです。食事も刺激物(アルコール・香辛料・味の濃いものなど)を避け、過度の運動は行わないようにし、睡眠・休養をよくとって、肉体的・精神的ストレスを少なくします。
≪参考サイト≫
○病気知識 アレルギー以外 皮膚掻痒症 (用賀アレルギークリニック)
原因等について、分かりやすくまとまっています。
○皮膚掻痒症 (十字屋平蔵漢方薬局)
対策が身近で分かりやすく紹介されています。
2.【 原発性胆汁性肝硬変 】
≪症状≫
最初の自覚症状は全身のかゆみやときおり感じる疲労です。黄疸や指先の腫れ(ばち指)、骨や神経、腎臓の異常といった症状が、数ヶ月~数年後に初めて現れます。便は色が薄くなり、脂っぽく悪臭がします。病気が進行すると、他の原因(肝炎ウイルスやアルコ-ル)による肝硬変と同じ症状、例えばむくみや、お腹に水がたまったり、吐血や下血などが現れます。 骨がもろくなる骨粗しょう症がほとんどの人にみられます。35〜60歳の女性に多くみられますが、男性やこれ以外の年齢層の女性にも発症します。
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≪原因≫
原因ははっきりしていませんが、免疫システムが自分自身の組織を攻撃する自己免疫反応が原因とみられています(そこには環境的要因も関与しているようです)。そのため関節リウマチなど、他の自己免疫疾患の合併が一般的です。そうして、肝臓内の胆管(肝臓でつくられた胆汁の流れる管)に炎症がおき、この炎症が、肝臓から外へと向かう胆汁の流れが妨げて、胆汁が肝臓内に滞留したり、血流に流れこむことで様々な症状を引き起こします。次第に炎症が肝臓の他の部分に広がって、そのままにすれば肝臓が回復不能なダメージを受けてしまうことにもなります(肝硬変)。
≪対処法≫
この病気の治療法は確立されていませんが、古くから漢方では「熊胆(くまのい)」として知られるウルソデオキシコール酸という薬(胆汁成分)が病気の進行を多少遅らせる効果があり、もっともよく処方されます。また、かゆみに対しては、コレスチラミンという薬が使われます。胆汁が不十分だと脂溶性の栄養素が腸からうまく吸収できないため、カルシウムやビタミンA、D、K等の栄養素を水溶性製剤として補給することも必要です。病気が進行した人では、肝移植が検討されます。
≪参考サイト≫
○難病情報センター 原発性胆汁性肝硬変 特定疾患情報
原因や症状、治療だけでなく、この病気に関して幅広い情報を提供しています。
○メルクマニュアル医学百科 家庭版 原発性胆汁性肝硬変 (万有製薬)
症状と診断、経過の見通しなどが詳しくまとまっています。
3.【 糖尿病 】
≪症状≫
初期症状がたいへん分かりにくいのが糖尿病の怖いところです。 「どうも身体の調子がおかしい」と自覚症状が出て、我慢できなくなって病院へ行く頃には、入院するほどに悪化していることもあります。自覚症状としてはまず、高血糖に由来して、喉の渇き、倦怠感、多尿、多食、むくみ、化膿しやすいなどの症状が出てきます。さらに進んでしまうと、合併症として、神経痛、視力障害、知覚異常なども見られるようになります。しかし、そうした症状がないまま、手や足の先がむずがゆくなり、胸、おなか、背中など、体のあちこちもかゆくなってきて糖尿病が発見されることもあります。
副腎機能低下症と高血圧
≪原因≫
膵臓の一部で作られるインスリンというホルモンが、足りなかったりうまく作用しなくなり、血液中のブドウ糖が細胞にきちんと運ばれずに、血糖値が上がってしまうもの。喉が渇くのは、大量のブドウ糖を排出するために尿の量が増えてしまい、体の水分が失れるためです。また、食べているのに体重が減るのは、食べてもブドウ糖が正常に利用されずに、慢性的なエネルギー不足になるため。倦怠感もそこからきます。こうして高血糖から多くの症状が出ることに加え、それによって臓器の働きが低下して合併症も出てくるのです。
なお、手や足の先がむずがゆかったり、痛がゆくなるのは、合併症の一つである神経障害が起き始めている可能性があります。全身がかゆくなるのは、体が軽い脱水症状に陥り、皮膚が乾燥するためです(皮膚掻痒症と同じ状態)。まれに、尿や汗の中のブドウ糖が皮膚に付着し、そこから菌が増殖することで外陰部や皮膚にかゆみを生じることもあるようです。
≪対処法≫
糖尿病は一度発症すると、一生付き合っていかねばなりません。まずは検査によりインスリンの働きを調べた上で、インスリンが出ていても足りなかったり、インスリンはある程度出ていても細胞でよく働いていないことがわかったら(2型と呼ばれます。日本人の9割がこのタイプです。)、食事療法と運動療法で様子を見ます。それでも効果が上がらないようであれば、それらに平行して薬物療法を行います。いずれにしても、バランスの取れた食事、定期的な運動、充分な睡眠と規則正しい生活といった、生活習慣の見直しが一番大事なようです。
≪参考サイト≫
○糖尿病との賢いつきあい方 (ロハス・メディカル 2006年1月号)
ちょっとややこしい糖尿病のメカニズムの基本からわかります。
○糖尿病ホームページへようこそ (厚労省)
基本的なことが、イラスト入りで非常にやさしくわかります。
○糖尿病のかゆみについて (旭労災病院ニュース)ちょっと難しい言葉もありますが、専門医が糖尿病に伴うかゆみについてきちんと解説しています。
4.【 慢性腎不全 】
≪症状≫
顕著な症状は、重症になってくるまで目立ちません。軽い頃は、夜間に何度も尿意を感じて排尿する夜間多尿症がみられます。その後、疲労感や脱力感を感じるようになり、注意力が低下、食欲減退や息切れが起きることもあります。あざができやすくなったり、切り傷などの怪我で出血が簡単に止まらなくなったり、感染に対する体の抵抗力も低下します。更には、筋肉のひきつり、筋力低下、けいれん、痛みなどが生じ、腕や足にチクチクするような感覚が出たり、特定の部分の感覚がなくなったりします。吐き気、嘔吐、口の中の不快感なども起こるようになり、進行すると、消化管に潰瘍ができ出血が起こります。皮膚は黄ばんだ褐色になり、ときには白い粉をふいたようになることもあります。これに加え、全身がかゆくなる� �ともあります。
≪原因≫
両方の腎臓を同時に傷害する病気はすべて慢性腎不全の原因となります。なお、慢性腎不全と言う名前は病名ではなく、腎臓の働きが低下していると言う状態の総称です。慢性腎不全の原因疾患として最も多いのは糖尿病で、次が高血圧です。どちらも腎臓の細い血管を直接的に傷つける病気です。原因としてはこのほか、尿路閉塞、腎臓の異常、抗体が腎臓の毛細血管や細い管に損傷を与える自己免疫疾患があります。
≪対処法≫
急性腎不全と異なり、治ることは期待出来ません。薬物療法や食事療法(たんぱく質の制限など)、安静療法により、腎臓への負担を減らし、少しでも進行を遅くさせることが目標となります。また、合併症の予防も大事です。増悪因子となる風邪などに感染しないよう気をつけ、下痢・嘔吐などによる脱水も避けたいところです。なお、腎機能が正常の10%以下に低下した末期腎不全に至ると、腎移植を受けない限り一生、透析を受けなければなりません。
≪参考サイト≫
○壊れて分かるありがたさ 慢性腎臓病、腎不全 (ロハス・メディカル 2007年5月号)
腎臓の役割という根本から理解できるので、ビギナーにおすすめです。
○腎臓病の種類と原因:慢性腎不全 (大阪府立急性期総合医療センター 腎臓高血圧内科)
数ページに分けて、腎臓病の基本から治療までが一般向けに詳しく載っています。
○メルクマニュアル医学百科 家庭版 慢性腎不全 (万有製薬)症状や治療の経過、見通し等が平易な言葉できちんと解説されています。
以上、全身のかゆみについての概要と参考サイトでした。
先日のとおり、かゆみ以外に症状が全くない場合は皮膚科を、それ以外の症状があるがいまひとつぴんと来ない場合は、病院の総合診療科や内科を受診するとよいでしょう。
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